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消防女子奮闘記

更新日:2019年4月1日

 1969年のこと。川崎市で女性消防士が誕生してから今年(2019年)で50年。
 以来、少しずつ女性消防士の数は増えているものの、全国の消防本部の消防吏員に占める女性消防士の割合は2.6%(2017年4月1日時点)と、まだまだ少ないのが現状です。
 二宮町消防本部では、2014年に初の女性消防士が誕生し、2019年4月現在、2名の女性消防士が在職しています。

 消防の業務は、火災や救助、救急等の災害出場時以外では、町民のみなさんとなかなかお会いする機会もないため、「普段は、どのようなことをしているのか」また、「どのような仕事があるのか」など、疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

 そこで、みなさんに消防業務へのご理解を深めていただくために、この「消防女子奮闘記」では、「災害が起きていないときに消防士は何をしているのか」、「消防にはどのような仕事があるのか」などを、連載で紹介させていただきます。

消防吏員・・・消防職員のうち階級を有する者

【最終回】女性消防士Q&A

 全12回で連載してきました「消防女子奮闘記」も、今回で最後となりました。
 連載では消防署の業務や女性消防士の活躍について紹介してきましたが、最終回は「女性消防士Q&A」と題しまして、救急隊員と消防隊員の女性消防士がさまざまな疑問にお答えします。
 未来の消防士を目指す若い世代の人たちの少しでも参考になればと思います。

Q1.消防士の仕事を選んだきっかけは?

救急隊員

救急隊員:私は幼い頃から人の役に立つことが好きで、人のために何かしたいと思っていました。性格も活発で、体を動かすことが好きだったので、将来の仕事について考えたときに消防で活躍できる「救急救命士」という資格を見つけて、「救急救命士っていいな」と思ったのが消防士を目指したきっかけです。母が看護師なので、医療系の資格に興味がありました。

消防隊員

消防隊員:私は東日本大震災が起きるまでは「消防士」という進路は全く考えていませんでした。しかし、プロ野球の球団職員になる夢をかなえるために球場でアルバイトをしていた際に東日本大震災が発生したことで試合が中止になり、「プロ野球の試合が開催できるのは災害のない安心・安全な社会があるからなんだ」ということを実感し、そのような社会の土台をつくる防災関係の仕事に興味を持ったということが消防士を目指したきっかけです。

Q2.女性消防士としての苦労や悩みはありますか?

救急隊員

救急隊員:消防学校に入校していたときは体力面での不安や厳しさがありましたが、周りに女子の同期もいたので、互いに悩みを相談しあいながら乗り越えることができました。現場に配属となってからの体力面の問題は、「女性だから」というよりは、一個人の能力としてもっと努力しなければいけないと感じていました。

消防隊員

消防隊員:私は二宮消防に女性第1号として採用されましたが、消防学校を卒業して現場に配属となった際、今思うとすごく周りの方々に気を使っていただいたと感じています。今では不要な気づかいがなくなり、とても働きやすい環境で仕事ができています。体力面では男性職員と比較するとどうしても劣ってしまいますが、努力は怠らず、しかし張り合おうとはせずに、自分のできることを精一杯やることで体力面を補えるように心がけています。

Q3.仕事のやりがいを感じるときは、どのようなときですか?

救急隊員

救急隊員:救急隊に配属されてからの方がやりがいを感じることが多くなりました。「女の人がいて良かった」という声を実際に現場で聞くことがあり、私自身は男性の隊員と違うことをしているわけではなく、普段通り観察や処置をしただけですが、私がいることによって町民の方の安心につながっているのであれば、それだけでも存在価値があるのかなと感じることができています。そういった瞬間がとてもやりがいにつながっています。

消防隊員

消防隊員:消防の仕事は成果が数字で表れるものではないので、具体的に「これがやりがい」と言えるものがまだありませんが、現在、消防士になって5年が経ちますが、今まで積み重ねてきたことが「身についているな」と実感したときにやりがいを感じます。

Q4.仕事とプライベートは両立できていますか?

救急隊員

救急隊員:24時間拘束されているので、仕事が終わると体力的にも、精神的にも「疲れているな」と感じることはあります。ただ、1当直が終われば必ず休みが入るので、「疲れた分、休みを充実させよう!」という気持ちでプライベートの時間を有意義に過ごしています。

消防隊員

消防隊員:当直勤務は「ここまでは仕事!ここからは休み!」というONとOFFのスイッチの切り替えがしやすいと思います。休みはジムに行って体を動かし、おいしいものを食べてリフレッシュしています。連続して休みが取れたときは旅行をし、気持ちをリセットして、「また仕事を頑張ろう!」という気持ちをつくっています。

Q5.これからの目標は何ですか?

救急隊員

救急隊員:女性なので、いずれは結婚、妊娠、出産、育児という過程を踏んだ上で、かっこいい「お母さん救急救命士」になりたいです。あとは、二宮消防では結婚や出産、育児を経験している女性職員がまだいないので、女性職員がさまざまなライフイベントを経験した後も働きやすい環境を今後、作っていきたいです。

消防隊員

消防隊員:私の今後の目標は、少年消防クラブなどの「子どもの防火・防災教育」に携わっていくことです。幼いうちから防火・防災に関する知識や思想を身に付け、大人になってもそうした行動を当たり前にとれる人を増やし、災害のない、災害が起きても被害が少ないまちをつくっていきたいです。私は地元が二宮なので、それが生まれ育ったまちへの恩返しだと思っています。

女性消防士集合

 消防士を目指したきっかけや仕事のやりがいはそれぞれ違いますが、「人を助けたい」という思いは同じです。

 この「消防女子奮闘記」を通して、消防の業務や訓練、女性消防士の現状について知っていただけましたか?
この連載をきっかけに、消防のこと、女性消防士のことについて少しでも興味を持っていたいただければ幸いです。
 これからも女性消防士のみならず、消防全職員が町民のみなさんの安心を守ります!

【第11回】女性消防士あれこれ その2

 消防女子奮闘記第11回は「女性消防士あれこれ その2」についてです。
 今回は「女性消防士における職域の拡大」について紹介します。

機関員

 1969年に川崎市で女性消防士が全国で初めて採用されてから2019年2月で50年がたちました。
 50年前は、消防業務における女性の深夜業が規制されていた時代だったので、女性消防士は現在のように、火災現場で火を消したり、救急現場で傷病者に対して処置をしたり、消防車を運転したりしていたわけではありません。
 そのような「警防業務」ができるようになるまでは、女性消防士は労働に関する法令などの「女性が働く」ということに立ちはだかる壁を越えてきました。そのため、女性消防士が採用され始めた当初は、主に毎日勤務の予防業務に従事していたそうです。

 その後、1994年に「女性労働基準規則」の一部が改正され、消防の業務についても、女性の深夜業の規制を解除。これにより交代制勤務が可能になり、119番通報を受信する通信指令業務や、救急隊としての救急業務ができるようになりました。
 この改正により、女性消防士の活躍の場が広がっていきます。この改正がなされたときは、救急救命士制度ができたばかりで、プレホスピタル・ケア(病院前救護)の充実を図るために、通常の採用試験枠とは別枠で看護師や救急救命士資格保有者を採用する動きが消防全体で盛んになりました。1991年8月15日時点ですでに看護師免許を取得していた場合、救急救命士試験の受験資格があったため、看護師から救急救命士(救急隊)として女性消防士に転職した方もいるそうです。

救急救命士

 そして2004年、女性消防士の職域はさらに拡大しました。総務省消防庁による「女性消防職員の警防業務への従事に係る留意事項について」の通知により、毒劇物等に係る特殊災害への対応を除く警防業務に女性消防士も従事できるようになりました。つまり、通常の火災や救助等の災害現場で、女性消防士が活動できるようになったのです。
 現在の女性消防士は、自分の努力とチャンス次第で、現場の最前線に行くことも、部下を束ねる管理職に就くことも可能になりました。全国には特別救助隊員やはしご車の機関員、救急隊長や消防署長の女性消防士もいます。


 こうして歴史を追ってみると、現在のように女性消防士が働きやすい制度や環境が整備されていない中で、女性消防士の先輩たちが懸命に職務に励んできたからこそ、今、男性職員と同じように消防隊員として活動することができる自分がいるのだと強く思いました。その苦労や努力を忘れずに、私自身も次世代の女性消防士たちにバトンをつないでいけるよう、今後も職務に励んでいきます。

 次回の消防女子奮闘記は最終回です。

【第10回】女性消防士あれこれ その1

 消防女子奮闘記第10回は、「女性消防士あれこれ その1」についてです。
 第10から12回は消防署の業務についてではなく、少し視点を変えて、女性消防士を取り巻く環境や現状についてみなさんに紹介していこうと思います。

火災防ぎょ訓練

 「女性の消防士さんもいるんだ」と声をかけていただくことがよくあります。そのたびに「気にかけてくださる方たちがいるのだから頑張らなければ!」と思うと同時に、「まだまだ女性消防士の存在は珍しいんだなぁ・・・」と感じています。
 私が小学生の頃に消防署見学に行ったときも、二宮町消防本部には女性消防士はいなかったですし、同級生の女の子で「将来の夢は消防士」と言っている子もいませんでした。私もその頃は将来、自分が消防士になるなんて思ってもいませんでしたし、そもそも女性の消防士という存在自体を知りませんでした。
 現在は東京消防庁や政令市などの大規模消防本部にはもちろん、二宮町消防本部のような消防吏員が100人以下の小規模消防本部にも女性消防士がいます。総務省消防庁の「消防庁女性活躍ガイドブック」(2018年3月)によると、女性消防士の人数だけを見ると、東京消防庁や横浜市、川崎市が多いですが、割合で見ると、全732消防本部中上位10本部のうち7本部は小規模消防本部です。この上位10本部の7位に二宮町消防本部が入っています。

車両救助訓練

 以前、消防署見学に来た小学生からのお礼状の中に、「将来は消防士になりたい」という女の子からのメッセージがありました。私が幼いときにはなかった「女性消防士」の存在が、彼女にとっては現実的に目指すことのできる将来の夢のひとつになったことをうれしく思いました。
 彼女が消防士になる頃には、どこの消防本部にも女性消防士がいるのが当たり前になっていて、もしかすると「女性消防士」という言葉も使われなくなっているかもしれません。

 次回は「女性消防士あれこれ その2」について紹介します。

【第9回】予防業務

 消防女子奮闘記第9回は、「火災予防業務」についてです。

予防掲示板

 二宮町消防本部における火災予防業務は、主に消防課・予防班で行っていますが、消防署でも防火対象物に対して立入検査を実施したり、火災予防運動期間中に行う訓練の計画を立てるなど、さまざまな型で火災予防業務を行っています。
 近年、電気機器やストーブなどの製品における防火安全性の向上、または住宅用火災警報器の普及などにより、火災の発生件数は減少傾向にあり、2008年から2017年までの10年間、二宮町における毎年の火災発生件数は一桁台を推移しています。
 起きてしまった火災に対応し、その被害を最小限に食い止めることはもちろん、火災を未然に防ぎ、火災の被害が発生しないよう取り組む「予防業務」も、消防が行う重要な業務の一つです。
 私自身も予防業務の重要性を感じ、実務に必要となる知識の習得に励んでいますが、時代背景や社会的影響のある火災の発生に伴って法令が改正されるため、継続学習が必要な分野だということを痛感しています。

勉強中

 女性消防吏員が採用され始めた当初は、女性が持つ特性を活かし、きめ細やかでソフトな消防行政を行うことが目的とされ、予防業務における家庭の主婦や高齢者、子どもなどに対する、「防火・防災教育の普及」が主な活躍の場だったそうです。
 2015年に報告された総務省消防庁のアンケート結果によると、全国の女性消防吏員3875人(2015年4月1日時点)の中からランダムに抽出された388人のうち、回答が得られた336人の約3割(28.6パーセント)、96人が予防業務を担当する部署に配属されているとのことでした。この数字は、私が配属されている消防隊(38人11.3パーセント)や、女性隊員の活躍が期待される救急隊(84人25.0パーセント)と比較しても、割合が高いことがわかります。今も昔も、予防業務の分野では女性消防士が活躍できる場面があるのだと思います。女性消防士の先輩方の予防分野における努力と活躍があったからこそ、現在の女性消防士の活躍推進、採用拡大につながっているのかもしれません。

 次回は「女性消防士あれこれ」について紹介します。

【第8回】消防のユニフォーム

 消防女子奮闘記第8回は、「消防のユニフォーム」についてです。

いろいろな服装

  消防士は消防隊や救急隊といった配置されている部隊、また火災や救急、救助など出場する災害によって服装や身に着ける装備を替えています。勤務中の基本の服装は、消防隊は紺色の「活動服」、救急隊は灰色の「救急服」を着用しています。二宮町消防本部では救急隊の中でも救急救命士の資格を保有している隊員だけが救急服を着用しており、救急救命士の資格がない隊員は、消防隊と同じ活動服を着用しています。式典などでは、冬季は紺色、夏季は水色と青色を基調とした制服を身に着けることもあります。これらは「消防吏員服装基準」によって形や色、階級章を付ける位置が決まっており、違う消防本部同士でもおおよそ同じようなデザインのものを着用しています。

はしごを登る消防隊員

 火災のときに消防士が身に着ける「防火衣」や「防火帽」、煙が充満した場所に進入するときに必要な「空気呼吸器」、これらを合わせると約15キロにもなります。この装備を身に着け、ホースやはしごを担いで走ったり、低い姿勢で屋内に進入をしたりします。火災のときの装備はISO規格(国際規格)を踏まえた「個人装備のガイドライン」に沿って作られています。日本製の防火衣は軽量化が進められており、活動服や救助服と重ねることで耐熱性を高め、立体的なデザインを採用することでより動きやすいものになっています。最近では防火衣や防火手袋などのサイズ展開も豊富になり、男性に比べ体の小さい女性消防士も自分の体のサイズに合った装備を着用することができます。私が採用された当初は、女性隊員向けのサイズがなく、靴や手袋は少し大きめのサイズのものを使っていましたが、ここ2、3年の間に「女性隊員向け」のサイズが増え、自分のサイズにぴったりのものを身に着けることができています。

 そのほか、救急出場や救急支援出場のときは「感染防止衣」という上着を着て活動をします。感染防止衣はその名の通り血液やウイルスからの感染を防止するためのものです。また訓練のときにはオレンジ色の「救助服」を着用することもあります。

 消防のユニフォームは、配置されている部隊を一目でわかるようにしている効果と、災害時に起こりうる危険から身を守る機能を合わせ持っています。

 次回は「予防業務」について紹介します。

【第7回】消防学校

 消防女子奮闘記第7回は「消防学校」についてです。
 消防学校は「学校」という名前がついていますが、入学試験に合格すると入学できる学校ではなく、消防職員や消防団員、あるいは消防防災業務に携わる人たちの「研修所」です。
 メディア等で取り上げられる「消防学校」のほとんどが、「初任科」という、消防士が一番始めに受ける研修を取り上げたものです。初任科では、消防学校敷地内にある宿舎に宿泊し、規則正しい共同生活を送りながら訓練や座学に励みます。新人消防士が厳しい訓練を受け、教官に叱咤激励されながら、仲間とともに成長していく・・・そんな研修です。採用試験に合格し、晴れて消防士を拝命されても、すぐに火災現場や救急現場で活動できるわけではありません。現場活動に必要な知識や技術の基礎部分、公務員、社会人としての倫理観を、この研修中に身に付けます。神奈川県の消防学校初任科は4月から9月末までの6か月間、横浜市を除く県内23消防本部の新人消防士が入校しています。2018年度二宮町消防本部に採用された3名も先日この研修を終え、10月1日より各警備隊に配置され、当直勤務に就いています。
 私の初任科時代の訓練は、ロープを渡ったり、登ったり、真夏に防火衣と呼吸器を着装してひたすら階段を昇り降りしたり、ホースを担いでグラウンドを何週も走ったりと、思い出しただけでぞっとするような訓練を、男女関係なく、同じ内容で行っていました。ちなみに同期は234名、そのうち女性は20名でした。

        防火衣着装    渡過訓練

 消防学校では初任科の他にも「救急科」や「救助科」、「火災調査科」等、業務で必要になる資格や技能、技術を得るための研修や、消防職員特別教育といわれる「女性活躍推進研修」や「外国人対応研修」といった、時代のニーズに合わせた研修が行われています。私は上記2つの消防職員特別教育に参加したことがありますが、「女性活躍推進研修」では女性消防士の草分け的存在の方の経験談や採用当初に苦労した話を聞くことができ、また「外国人対応研修」では英語を母国語とする人たちとの火災や救急の現場を想定した英語での対応訓練、昼食時のランチミーティングと、普段の業務とは一味違った体験をすることができました。研修は技術や技能を習得、あるいは向上をすることができる有意義なものですが、他の消防本部や講師の方との交流とつながりができる、貴重な機会でもあると思います。

 次回は部隊や出場する災害によって異なる、「消防のユニフォーム」について紹介します。

【第6回】救急隊の機関員

  消防女子奮闘記第6回は、「救急隊の機関員」についてです。

救急車

  救急車や消防車などの緊急自動車は、火災・救助・救急等の災害対応のために「基準に適合するサイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつけて運転中」等の要件を満たすことで、道路交通法上の特例が認められています。代表的なものは、赤信号や一時停止場所でも停止せずに通行ができる「停止義務免除の特例」や、法定速度を超えての走行が認められる「最高速度の特例」などがあります。しかし、実際の運転では、赤信号や一時停止場所で停止や徐行をせずに通行することはほとんどありませんし、最高速度の特例が認められていても、一般道では80キロメートル毎時以下、高速自動車道では100キロメートル毎時以下での走行が決められています。そして何より、救急車は隊員以外の傷病者やその家族、関係者などの第三者を乗せての緊急走行であるため、安全で丁寧な運転を心がけなければいけません。私が救急車を運転するようになってから指導されたことは、

・急ブレーキや急ハンドルなどの「急」がつくことはやらない
・マンホールや舗装の段差、状態が良くない舗道の部分は避ける、あるいは徐行する
・運転にメリハリをつける
・自家用車と同じ感覚で運転をしない

です。「急」がつく動作は、傷病者への影響はもちろん、車内で処置や観察をしている隊員に怪我を負わせてしまう可能性がありますし、マンホールや舗道の凹凸での衝撃は、それまで落ち着いていた傷病者の容体を悪化させてしまう恐れがあります。これらを考慮し、時にはゆっくり、慎重に走行する必要があります。しかし、慎重になりすぎて搬送時間が長くなってしまうのは避けたいので、スピードを出せるところはしっかりと出すといった運転のメリハリが必要です。また、プライベートで乗っている自家用車と同じような感覚で運転をしていると、自分の運転の癖が出てしまうことがあります。日頃から車の運転に慣れておく必要がありますが、救急車を運転するときは、「緊急自動車を運転している」という意識を持つことが大切だと思います。

救急機関

  私自身、消防士になる前は救急車はとにかく早く病院へ到着すればいいものだと思っていましたが、実際に運転をするようになってからは、道路状況や周囲の環境、傷病者の容態等多くのことに注意を払って運転しなければいけないのだと、その大変さを実感しています。車の運転はあまり得意ではありませんでしたが、傷病者、そして自分の隊の隊員も、私の運転する車両に安心して乗れるよう、運転技術の向上に励んでいきます。

 次回は「消防学校」について紹介します。

【第5回】訓練

 消防女子奮闘記第5回は、消防署で行っている「訓練」についてです。
 消防士たちが出動する災害は「火災」、「救助」、「救急」と主に3つに分けられます。日頃行っている訓練も、この3つに分けて行っています。

火災防ぎょ訓練(消防訓練)

 一言に「火災」と言っても、一般住宅や共同住宅、山林や車両などの種類があります。火災の種類によって、「どのようにホースを延ばすか」、「資機材は何を使うか」など、消火活動は次に起きることや起こる可能性があることを常に考えて活動することが求められます。訓練でも、次の行動をイメージし、持っていく資機材や取るべき行動を隊員間で確認しながら行います。一つの区切りごとに、気付いた点や改善点を話し合い、実災害での不安を取り除けるよう訓練を行っています。

  防火衣着装 訓練中 ホース延長

救助訓練

 救助事案のときは、「救助工作車」という車両で出動します。救助工作車はポンプ車や水槽車のように火災に対応できる積載水やホースは載せずに、100以上の「救助することに特化した」資機材を積載しています。これらの資機材の使い方や、準備から撤収するまでを安全に、正しく、そして素早く行えるよう訓練を積み重ねます。
 三連はしご、カラビナ、ロープといった、救助工作車以外のポンプ車や水槽車にも積載している資機材を組み合わせ、高所や低所から要救助者を救出するシステムを作成する訓練も行います(写真下)。このような訓練では救助システムを作成する手順はもちろん、隊の中での役割分担や連携を確認することも重要な目的です。

  はしごクレーンシステム 訓練中 要救助者救出中

救急訓練

 救急活動で使用する資機材の使い方や手技などを習得する訓練も行いますが、傷病者やその家族への対応の仕方、症状や処置の判断、病院への連絡の取り方を習得するための訓練も行います(写真下)。救急隊は救急分隊長、機関員、隊員の3名で構成されていますが、訓練の中では隊員が隊長役になったりと、実際の救急活動時の役割とは違う役になって訓練を行うことがあります。これは、いつもと異なる役になることで、自分以外の隊員が活動中にどのような動きをしているのか、その役が必要としていることは何なのかを知ることができる訓練になっています。私は救急隊の隊員として救急車に乗ることもありますが、この訓練を行うことで隊長や機関員の次の行動や求めていることが理解できるようになり、活動中の視野が広がったと感じています。

                       傷病者接触 聞き取り中

  それぞれの災害に合わせ、どのような訓練を行っているかがお分かりいただけましたか?実際の災害は、火災・救助・救急の活動が混合しているものもあります。そのような災害に備えて行っている総合的な訓練は、二宮町総合防災訓練や、秋季・春季火災予防運動時の訓練などで皆さんにご覧いただけるよう、「展示訓練」として公開しているものもあります。機会があればぜひ、消防署の訓練をご覧ください。

 次回は「救急隊の機関員」について紹介します。

第4回【救急救命士】

 消防女子奮闘記第4回は「救急救命士」についてです。

 救急救命士は1991年4月23日に制定された「救急救命士法」ストレッチャー点検により制度化され、それまで心肺停止状態の傷病者や一刻を争う傷病者に対しても行うことができなかった「静脈路確保」や「気管挿管」などの「救急救命処置」を、医師の指示のもと行えるようになりました。救急救命士が行う処置は、医師に引き継ぐまで症状の悪化を防ぎ、時には改善を図るものですので、救急救命士の誕生によりそれまで救うことができなかった命も、救える可能性が高くなりました。
 救急救命士になるには、救急救命士養成所(専門学校・救急資器材点検大学等)で2年以上救急救命士として必要な知識及び技能を修得し受験資格を得るか、消防機関で5年以上または2000時間以上救急業務を経験した後、救急救命士養成所に6か月間入所し、受験資格を得て救急救命士国家試験を受験する主に2つの方法があります。私は高校卒業後、救急救命士の受験資格が得られる専門学校に進学し、救急救命士資格を取得しました。二宮町消防本部には、2018年現在、16名(うち女性2名)の救急救命士資格保有者がいます。

訓練血圧測定

 私は2016年4月に二宮町消防本部に採用され、2018年の4月から学生時代からの目標であった救急隊に配属されました。消防士になる前は病院で看護補助員として働いていましたが、助けを求める傷病者のもとへいち早く向かい、処置を行うことができる救急隊の仕事にやりがいを感じています。私たち救急救命士にとっては何百、何千回のうちの一回の救急事案でも、傷病者にとっては一生に一度の救急要請かもしれません。そのことを常に考え、「傷病者に寄り添い、同じ目線に立って活動すること」を心がけています。特に、女性や子どもに対しては威圧感を与えないよう、安心してもらえるような声かけや処置を心がけています。
 消防士としても、救急救命士としてもまだまだこれから学ぶべきことがたくさんありますが、救急隊員としてはもちろん、救急隊以外でも救急救命士の資格を生かしていけるよう、職務に励んでいきます。

 次回は、消防署で行っている「訓練」について紹介します。

第3回【救助指導会】

 第3回のテーマは「救助指導会」についてです。
 みなさんは「救助指導会」をご存じですか?消防士なら知らない人はいない、年に1度の夏の風物詩です。動画共有サイトで「救助指導会」や「救助大会」と検索すると、目まぐるしい速さで訓練を行う消防士の動画がたくさん出てきます。
 「救助指導会」は、消防救助技術の「安全性、確実性、迅速性」を競う消防士の大会です。救助隊員だけでなく、署内選考等を通過した消防隊員や救急隊員、もちろん女性消防士も参加しています。昨年度の神奈川県消防救助技術指導会では陸上の部「ほふく救出」に女性消防士のみで構成されたチームが出場し、話題になりました。

 二宮町消防本部では1992年から救助指導会に参加しており、ほふく救出では2016年に全国消防救助技術大会へ出場した、輝かしい成績も残しています。

ほふく救出基本泳法

 

訓練棟

 2018年6月12日、神奈川県総合防災センターにおいて開催された第43回神奈川県消防救助技術指導会は、神奈川県内各市町消防本部の職員が、日頃鍛えている消防救助技術の成果を発表するとともに、各市町相互間の防災連携意識を高めることを目的に行われました。神奈川県消防救助技術指導会は、消防救助技術関東地区指導会及び全国消防救助技術大会への出場者の選考を兼ねています。 
 2018年度、二宮町消防本部では、陸上の部・ほふく救出、水上の部・基本泳法、溺者救助の3つの種目に出場しました。

 私は「溺者救助」の要救助者として今回の指導会に出場しました。「溺者救助」とは、要救助者を含む3人1組で救助者と補助者の2人が協力して浮環にロープを結び付け、補助者が浮環をプール内へ投下して、救助者が25メートル先の要救助者の位置まで浮環を運び、これに要救助者をつかまらせ、補助者がロープをたぐり寄せて救助するまでの安全確実性と所要時間を競う訓練です。
 「要救助者」とは救助を必要とする人のことで、救助指導会の連携訓練における要救助者も、救助者(ここでは消防士のこと)と同じ消防本部の者が務めます。
 私はこの訓練を始めて3年目になりますが、訓練を重ねる中で「チームワークの重要性」を改めて感じるようになりました。消防は日頃の業務もチームワークを必要としますが、指導会で行われる訓練も同じで、どんなに早く泳げる隊員や、力持ちの隊員がいたとしても、連携できなければ個々の力は十分に発揮されません。それぞれの役割を果たすことも大事ですが、それと同時にお互いを知り、補うことがとても大切だと思うようになりました。2018年度は良い結果を残すことはできませんでしたが、指導会を通して得たことを、日頃の業務や災害出場時にも生かしていけるようこれからも業務に励んでいきたいと思います。

 次回は「救急救命士」について紹介します。

第2回【消防署の一日】

 今回のテーマは「消防署の一日」についてです。

 二宮町消防署では、24時間365日、火災や救助、救急等の災害がいつ発生しても出動できるよう、3つの警備隊が交替で勤務しています。
 その勤務体制は「交替制勤務」と「毎日勤務」があり、「交替制勤務」は朝の8時30分に前日に勤務していた警備隊から業務を引き継ぎ、翌朝の8時30分に次の警備隊へ業務を引き継ぐまでの24時間が勤務時間になります。
 また、「毎日勤務」は平日の8時30分から17時15分までの日中の勤務で、基本的には土日祝日が休みの勤務体制です。
 今回は、交替制勤務となる消防隊員や救急隊員の一日を紹介します。

8時30分~ 大交替

大交替

 まず、朝の大交替から始まります。
 消防庁舎の車庫前に整列し、前日に勤務していた警備隊から業務を引き継ぎます。
 その後、事務所で警備隊長や機関員、救急隊など、担当者ごとに引き継ぎを行います。
 


 

9時00分~ 車両資機材点検

救急車点検

 引き継ぎが終わった後、最初に行うのが「車両資機材点検」です。
 自分たちが使う機材や車両の装置は自分たちで動かし、自分たちの目で状態を確認します。
 火災や救助、救急事案に出動したときに壊れていたり、決まっている場所に機材が入っていないことがないよう、準備を万全にしておきます。
 

10時00分~ 警防調査・事務処理等

 警防調査といって、町内にある消火栓や防火水槽などの消防水利、町内に設置してある消火器の点検を行います。
 また、火災につながるおそれのある枯草や雑草が生い茂っている土地、土砂崩れが起きそうな箇所の調査や、町内にある防火対象物の検査も行います。
 消防隊は6名、救急隊は3名で構成されますが、点検や調査などで署外に出向くときも、いつ災害が発生しても対応できるように、常に隊単位で行動します。
 点検や調査、検査が終わると、事務処理の時間に報告書を作成します。

12時00分~ 昼休憩

 災害はいつ起きるかわかりません。
 ごはんをはやく食べるのも消防士の仕事です。

13時00分~ 訓練

訓練

 火災防ぎょ訓練や資機材取扱い訓練は消防水利のある場所に出向いて実施し、また消防庁舎を使って行います。
 火災出動の時の装備である防火衣を着て、空気ボンベを背負い、実際に放水する訓練も行いますが、防火衣と空気ボンベを合わせた重さはなんと約15キロ!
 この装備を身に着け、はしごを登ったり、ホースを担いで階段を駆け上がったりします。
 

18時00分~ 夜休憩

 ほっと一息。一当直の折り返し地点です。

19時00分~ ミーティング・救急訓練・事務処理等

ミーティング  ミーティングでは、その日に実施した訓練の振り返りや、業務の進み具合の報告を行い、翌日の隊に引き継ぐための整理もします。
 また、救急訓練では、救急隊と消防隊が連携した救急活動(PA連携)を想定した訓練を行います。
 

 

 

22時00分~ 夜間通信勤務・仮眠時間

トレーニング

 夜間でも、電話や来庁者に対応できるよう、交代で勤務しています。
 仮眠時間は6時間30分ですが、災害指令が入ればすぐに起床し、災害現場に向かいます。
 また、この夜間の時間を利用して筋力トレーニングや資格取得の勉強、業務の知識向上など、それぞれが自己研鑽に励んでいます。
 

6時30分~ 起床・朝ミーティング・車両整備

車両整備 起床後は、庁舎内の清掃を行います。
 朝ミーティングで引き継ぎ事項や次の勤務日の予定を確認し、車両整備では次の警備隊にきれいな状態の車両を引き継げるよう、車両の隅々まで磨きます。
 

 

 

8時30分~大交替

 次の警備隊に業務を引き継ぎ、一当直24時間勤務が終わります。

 

 消防署の一日、いかがでしたか?当直の警備隊は24時間丸々勤務をしているわけではなく、休憩や仮眠時間などを除いた15時間30分が実働の勤務時間です。その時間以外も許可なく外出したりすることはできません。そしてもちろん、災害が起きれば休憩時間や仮眠時間に関係なく出動します。

 次回は「救助指導会」について紹介します。

第1回【機関員】

点検の様子

 今回のテーマは「機関員」という仕事についてです。
 消防の世界では、消防車や救急車を運転する運転手を「機関員」と呼びます。機関員は、車両の運転をするだけでなく、車両についているポンプやクレーンの装置を操作したり、その装置がきちんと使えるかを点検したりと(写真左)、消防車両に関するさまざまな知識と技術が必要とされます。

 私は、この4月から「機関員心得」になりました。「心得」をわかりやすく言うと「見習い」です。
 日々、隊長や先輩方にご指導いただきながら、走行訓練や揚水訓練、火災防ぎょ訓練などを実施したりと、覚えることはたくさんありますが、とても充実した日々を送っています。

点検の様子2

 機関員の一日は、前日に勤務していた隊からの引継ぎを受けた後、朝の車両資機材点検から始まります。
 今日一日、この町に何もないことを願いながらも、出動要請があった際には素早く出動して的確な任務遂行ができるよう、消防車両に異常がないかを点検するとともに、例えば、火災が発生した場合でも、確実に放水することができるよう資機材の点検や準備、また、自分が使いやすいように資機材を整えたりします。
 火災防ぎょ訓練については、さまざまな想定のもとで訓練を行っています(写真右)。
 そのような訓練を通して感じていることは、消防隊員がどんなに早くホースを延長して放水の準備態勢がとれたとしても、機関員の放水準備が遅ければ意味がありません。
 そのため、どのようにすれば「速く、的確に」放水準備ができるのか。また、指揮者から、火点の状況により放水量や放水圧力をコントロールする指示がその都度ありますが、それに対しても「速く、的確に」対応できるよう、考えながら訓練を行っています。

 「機関員」の仕事は、車両の運転や操作をする重要な役目であると同時に、操作を一つ間違うと、重大な事故につながるおそれがある職務です。
 私の機関員の道はまだ始まったばかりですが、早く「心得」から一人前の機関員となれるよう、日々、訓練に励んでいきたいと思います。

 次回は、「消防署の一日」について紹介します。

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