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あしあと

    二宮町のオリーブ事業の推進

    • [更新日:2024年2月6日]
    • ID:1100

    二宮町では、気候温暖な立地条件を生かし、耕作放棄地の解消や有害鳥獣対策などにも繋がり、高付加価値化が実現可能な作物として、新たな特産品「湘南オリーブ」の栽培に取り組んでいます。

    オリーブの分類と特性

    オリーブは、モクセイ科の常緑高木です。樹齢はきわめて長く、ヨーロッパなど原産地では1,000年を超える古木も少なくありません。

    日当たりと温暖な気候を好み、日照量が多いほど生育は良好です。

    乾燥に強いと思われがちですが、灌水により高品質化が可能なので、計画的に灌水が行える水源があると良いです。

    オリーブは単一品種では結実しにくい自家不結実性という性質が強く、実をつけたい場合は2品種以上を植えます。

    オリーブ1
    オリーブの分類と特性一覧
    栽培条件二宮町(平成24年)
    日照時間1年あたり2,000時間以上1年あたり2,008時間(小田原市)
    年平均気温14度から16度18.3度
    年間降水量1,500ミリ以内が栽培適地 2,000ミリ以内で栽培可能地1,814ミリ

    二宮町統計書による

    栽培の歴史

    オリーブ2

    オリーブ栽培の起源には諸説ありますが、約6,000年前、地中海東方の地域(現在のトルコ、シリア、ヨルダン周辺)で、最初に栽培法が確立したと言われています。

    紀元前14から12世紀にギリシャに伝えられ、紀元前6世紀ごろからローマ帝国の拡大とともに地中海沿岸の諸国や北アフリカなど、広い地域に伝わっていきます。現在の主な生産国であるイタリアやスペインでも、このころから広く栽培されるようになったと推測されます。

    日本へは、約400年前の安土桃山時代に、ポルトガル人の宣教師によって初めてオリーブオイルが持ち込まれ、本格的な栽培試験がスタートしたのは明治時代の後半になってからで、三重、鹿児島、香川の3県に苗木が植えられ、香川県の小豆島に植えた木だけが順調に生育しました。

    現在、瀬戸内海地域(香川県、岡山県、広島県)や九州などが産地として知られています。

    オリーブの成分と効果

    オリーブオイルでもわかるように、オリーブの実の主成分は脂肪です。

    植物油の主成分は脂肪酸ですが、脂肪酸の中でもオリーブは「オレイン酸」が7割占めています。オレイン酸は善玉コレステロールを減らさずに悪玉コレステロールだけを減らす働きがあります。

    心臓疾患、高血圧などの生活習慣病予防に効果的であり、さらに抗酸化作用により認知症、老化といったアンチエイジング効果も期待できます。現代の私たちの生活に非常に有効な成分と言えます。

    また、オリーブの渋み成分「ポリフェノール」には体内の酸化を防止する働きがあり、がん予防などの効果があると言われています。

    オリーブは健康食品として注目されているもののひとつです。

    湘南オリーブ試験場看板

    平成23年に、町内でいち早くオリーブ栽培を始めていた中里の農業法人、株式会社ユニバーサル農場の濱田さんが、坂本町長にオリーブの収穫によってできたオリーブオイルを紹介したことがきっかけで、二宮町でもオリーブが栽培できることを知り、町は将来を見据えた新たな特産物としてオリーブ栽培に着目しました。

    オリーブ栽培を取り上げる背景には、二宮ブランドが提唱する「健康長寿の里二宮」に相応しい特産物のひとつになりえると言えることや、オリーブの実の渋みが鳥獣を寄せ付けにくいものとして、鳥獣被害の面から他の作物と比較して有効な点で、遊休荒廃農地対策等につながるためです。

    また、オリーブは他の果樹よりも多くの反収が見込まれ、農業所得の向上など、農業再生という観点からも期待できるものとして捉えています。

    講習会の様子1

    事業への着手としては、平成24年度をオリーブ元年と位置付け、一色地区に17アールの試験圃場を開設、ミッション、マンザニロなど国内で生育実績のある4品種、可能性のある3品種の合計7品種60本の苗木を定植し、栽培を希望する農家30軒に合計974本の苗木の助成配付を実施しました。

    栽培技術指導につきましては、神奈川県農業技術センター普及指導部の協力を得て、試験圃場における生育特性調査研究を実施。

    小豆島からは専門家を招き、剪定栽培講習会を開催しました。

    講習会の様子2

    平成25年度は、神奈川県農業技術センター普及指導部による農家圃場の巡回や栽培講習会を開催、その中で活着不良が原因と思われる生育不良の樹が多いとして、土壌pHが酸性であることと石灰分の不足、土壌水分の管理不足及びオリーブは根が浅く強風の影響により倒木しやすいため、支柱への誘引・固定不足の問題点が報告されました。

    また、近隣の小田原市、山北町、さらにはイタリアオリーブオイルソムリエ協会の視察を受け意見交換を行うなど、順調に取り組んでいるところです。

    講習会の様子3

    オリーブの生育状況

    オリーブは苗木を植えてから実が収穫できるまで4、5年ほどかかります。

    実際に2、3年ほどで実は付きますが、将来大きくならせるため若木のうちは付いた実を摘果します。

    平成24年度に植えた高さ50センチくらいの2年生苗は、大きいもので2mくらいにまで成長しています。

    農家30軒の平成25年9月時点の生育状況ですが、総数974本のうち、良好802本、生育不良172本、また試験圃場では60本のうち、良好41本、生育不良19本となっています。

    農家によって差があり管理不足による偏りもありますが、町内にあるオリーブの約8割は順調に生育していると言えます。

    オリーブ苗木

    防除対策

    病害虫被害の様子

    病害虫被害は、天敵とされているオリーブアナアキゾウムシに加え、ハマキムシ、スズメガ及びカイガラムシなどが発生するので、防除対策をしっかり行う必要があります。

    栽培目標

    栽培本数については、短期目標の平成27年度までに2,000本とし、将来目標である平成37年度までに5,000本の普及を図ります。

    栽培面積については、栽培適地調査を行いながら遊休荒廃農地の解消を図りつつ、平成27年度までに4ヘクタール、将来目標として平成37年度までに10ヘクタールに拡大していく予定です。

    1反(約10アール)あたりの栽培本数は、植栽間隔を縦5メートル、横4メートルにして50本、成木になる6年生から収穫ができると想定しています。

    はじめは1本あたり4キログラム程度の実をつけ、その後の栽培技術の確立により、10年目には1本あたり10キログラム、15年目には1本あたり15キログラム、20年目には1本あたり20キログラムの収穫量を見込みます。

    将来的に、平成40年度には約50トンの収穫を目指します。

    また、苗木生産の将来的な計画として、元気の良い新芽をさし木として育て、農業者向けの生産用や一般町民向けの観賞用として大苗生産事業も取り組む予定です。

    平成26年度以降の取り組み

    オリーブ研修

    まずは、町園芸協会の中にオリーブ栽培に特化した部会を創設し、栽培技術の確立を図ります。

    また、遊休荒廃農地を中心とした栽培適地調査の結果を踏まえ、荒廃農地を解消し、栽培面積の拡大を図ります。

    さらに、生産者、加工業者、販売業者などが参画する組織づくりとして、湘南オリーブ振興協議会を立ち上げ、具体的な方向性を定めていきたいと考えています。

    栽培技術の確立においては、引き続き神奈川県農業技術センターから栽培管理の指導をいただきますが、より高品質なオリーブ栽培技術・加工開発の確立においては、香川県小豆島やオリーブ関係団体等にもご支援、ご協力をいただきます。

    オリーブを使用した加工商品は、オリーブオイル、塩漬けなどがありますが、その他の食品、化粧品、お茶への活用を検討し、町として何を目指していくかを協議会の場において決めていく予定です。

    そして、農商工連携や6次産業化を含めた加工、販売組織のあり方を検討し、「湘南オリーブ」の確立を図ります。

    オリーブを活用したまちづくりの展望

    オリーブの持つイメージ「気候温暖」「爽やか」という部分と二宮のキーワードである「健康長寿」「湘南」を掛け合わせてイメージアップを図り、観光オリーブ農園における手摘み体験やオリーブを使用した食のフェスタを開催し、観光客の誘致に取り組みます。

    また、産学官連携の取り組みを始め、地域、福祉、教育の観点から、公共施設、学校への植栽や小学校への配布など、農家だけでなく町民全体へ普及し、オリーブを活用した育てる喜び、収穫する喜びを体験できるような取り組みを行います。

    将来的には、二宮町だけでなく近隣市町にも呼びかけ「湘南オリーブ」としてブランド化を図るとともに、生産だけでなく加工・販売へとつなげることで雇用と所得の確保にも結びつけ、オリーブの町としてまちおこしにもつなげていきたいと考えています。