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あしあと

    一つ目小僧

    • [更新日:2022年11月7日]
    • ID:521

    一つ目小僧とは、目が一つしかない小僧の妖怪として広く知られています。人間を脅かす妖怪として各地の民話に登場しますが、静岡県や南関東地方では2月8日と12月8日の夜に一つ目小僧がやってくる、とういう俗信があります。二宮町でも昔、12月8日には「一つ目小僧」と呼ばれる行事が行われていました。

    それは二宮町のどの地域でも見られ、12月8日には一つ目小僧が来ると言って、玄関に目の粗いザルや背負い籠を置くというものでした。一つ目小僧に目立つようにと竹の棒に目籠を吊るして物置の前に置いたり、屋根の上に出す家もありました。籠にたくさん目があるのを見た一つ目小僧がびっくりして逃げていくというわけです。籠や家の周りにはメザシやヒイラギを刺すこともありました。それには魔よけの意味がこめられていたと思われます。

    はきものを外にだしておくと一つ目小僧に判を押されるとも言われ、皆、はきものを家の中に取り込みました。

    また、12月8日に一つ目小僧が帳面をサイノカミ(道祖神)に預けて行くという言い伝えも残っています。2月8日に一つ目小僧がそれを取り戻しに来るのですが、サイノカミは「サイトバライ(ドンド焼き)で燃やしてしまった」と答えるというものです。同様な言い伝えは静岡県田方郡田中村にもあり、そこでは12月8日に一つ目小僧が家の中を覗いて家族の運を決めて帳面に書くと言われています。

    二宮町一色地区では、ドンド焼きの時に道祖神の小屋ごと燃やすのは、12月8日に一つ目小僧が疫病神を道祖神に持って行き、預けておくからだという伝承もあります。

    2月8日、12月8日は厄日で、山に入ると必ず事故にあう、とも言われている事から、「一つ目小僧」はわざわいを避けるための行事であったといえるでしょう。

    昭和15年(1940年)に発行された『二宮町郷土誌』には年中行事の項目の中に、「2月8日・12月8日 目一つ小僧」という記述がありますが、昭和31年(1956年)発行の『二宮町郷土誌』では「一つ目小僧 昔はかごを屋根にのせておいた」という記述に変わっているので、この行事も戦後まもなく消えていったと考えられます。

    玄関に目の粗いザルや背負い籠を置く人たち

    『二宮町郷土史』二宮町教育委員会編 昭和47年(1972年)より

    参考

    • 『二宮町郷土誌』二宮尋常小学校編 昭和15年(1940年)
    • 『二宮町郷土誌』二宮町教育委員会編 昭和31年(1956年)
    • 『二宮町民俗調査報告書』二宮町教育委員会編 平成9年(1997年)
    • 『妖怪事典』村上健司著 毎日新聞社 平成12年(2000年)