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あしあと

    七草(ななくさ)

    • [更新日:2022年11月7日]
    • ID:523

    年中行事としての七草とは、1月7日に春の七草(セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ)を入れたおかゆを食べることをいいます。

    昔、中国には「正月7日に七種の菜をもって羹(あつもの=吸い物のこと)をつくる」という風習があり、その夜には邪気の象徴である鬼鳥が飛んでくることが多いので、人家では床や戸を打ち鳴らし、鬼鳥を追い払ったそうです。その影響を受け、日本でも大きな音をたてて七草をきざみ、言葉を唱えて無病息災を願う七草の行事が定着し、かつては二宮町のどの地域でも行われていました。

    七草の行事はまず1月5日に七草を集めることから始まります。セリ、ナズナ、スズシロ(大根)などを山や畑に取りに行ったり、小松菜、自作の野菜などを使うこともありました。

    6日の晩には年神様の前に、火ばし、スリコギ、サイバシ、シャモジなどと、包丁、まな板、木鉢を用意します。そして木鉢の上にまな板をのせて七草を置き、戸主または長男がスリコギやシャモジなどで七草をたたきながら唱え事をしました。しゃもじで七草を押さえ、包丁の峰でたたきながら唱え事をしたところもあったようで、大人と子どもが一緒に行う家もありました。唱え事は「七草ナズナ、唐土(とうど=中国)の鳥と日本の鳥と、渡らぬ先に、合わせてバタバタ」とか、「七草ナズナ、唐土の鳥が渡らぬ先に、ストトントンと、来ないうちに叩いてしまえ」などで、言い回しに多少違いがあるものの、3回繰り返したそうです。この唱え事には害鳥、害虫による被害がなく、本年も豊作であるようにとの願いがこめられていたものと思われます。

    最後に7日の朝、もう一度七草をたたいてからおかゆを炊きます。おかゆに餅を入れることもありました。味は味噌で付けますが、7日が味噌の使い始めとなり、それまでは味噌は使ってはいけないと言われました。

    また、七草を爪につけるとケガをしないとも言われ、七草をたたいたツユを爪につけるまで爪を切らなかったそうです。この言い伝えは江戸時代、七草の時にナズナを水の入った茶碗に入れ、その水に指を浸してその年初めて爪を切るという「七草爪」という風習からきていると推測されます。さらにこの「七草爪」は、「唐土の鳥」が人間の魂を消滅させる鳥で、この鳥が人が家の軒下に捨てた爪を食べに来ると信じられていたことに関係しているのではないかと考えられます。

    今ではこのような行事や習慣は見られなくなりましたが、七草のセットがスーパーで売られ、お正月のごちそうで疲れた胃を休める食事として七草がゆの風習は受け継がれています。

    七草行事の道具と材料の写真

    七草行事の道具と材料

    参考

    • 『日本民俗大辞典』吉川弘文館発行 平成12年(2000年)
    • 『江戸の庶民生活・行事事典』渡辺信一郎著 東京堂出版発行 平成12年(2000年)
    • 『二宮町民俗調査報告書』二宮町教育委員会編 平成9年(1997年)